作品電子化と少部数印刷で、あなたの表現をさらに豊かに
凌雲堂では、墨作品の電子化(スキャニング)と、大判顔料インクジェットプリンタ「PX-H9000」による少部数印刷をお受けしております。
顔料プリンタで書道用紙に印刷した場合、まるで筆で書かれたような仕上がりです。印刷したものを表装し、お店に掛けてありますが、複製と指摘された方はおりません。古いものは10年近くになりますが、色あせもありません。
印刷するためには、作品を電子データに変換する(電子化)必要があります。一度電子化された作品は、あとは何回・何枚でも印刷代のみで印刷できます。電子データならではのさまざまな応用が考えられますので、お客様の遊び心で、表現や発表の幅を広げて頂く面白いことができるかと思います。どうぞご活用ください。
作品電子化で広がる表現
作品の共有
墨の作品は「筆の運び」という時間的要素があるため一期一会です。インクジェット出力が肉筆にかなうことはありませんが、納得がいく作品が書けることが少ないのもまた事実です。
- よく書けた作品
- お弟子さんから欲しいといわれた作品
- 自分にも描いて欲しいと友人から頼まれた
- 故人の作品を子供達で共有したい
‥‥など、高度な複製ができるのであれば、様々な用途考えられます。今後、墨作品の発表の形態も、電子化によって変化してゆくかもしれません。たとえデジタルのプリントアウトだとしても、それが鑑賞に堪えうるだけの品質を持つのであれば、今後、版画のように複製を複製として流通させる、という時代が来るかもしれません。部数を限定して出力し、署名、ナンバリング、雅印などによるオリジナルの証明、という形態です。
また、電子データならではの方法として、注文があった分だけ出力し、頒布する、ということも可能です。将来は展覧会の作品名札につけられたQRコードから複製の軸装が注文できるサービス、という展開も考えられます。
いろいろな形式で
電子化された作品は何度でも印刷可能なため、同じ作品をいろいろな形式で楽しむことが可能です。掛軸、額装だけでなく風炉先、襖紙、カレンダー、名刺やショップカードなど、いろいろな応用が考えられます。また、現代アート的なアプローチとして、同じ作品を異なる色で出力し並べる、などといった表現もできます。
- 掛軸部分も作品も1枚に印刷し作った掛軸風壁掛。一文字はオリジナルの珈琲唐草。
サイズ変更
作品のサイズ変更が可能です。拡大すると滲みも拡大されて面白い効果になる場合があります。余白のある作品は、さらにそれを広げることにより、お手持ちの額へ作品をあわせることも可能で、額の有効利用につながります。筆ペンで書かれた小さい作品を拡大し、掛軸に仕立てたり、文字の位置を再配置してバランスを取ったり、様々な応用が考えられます。なお、縮小する場合、かすれや滲みが綺麗になり過ぎて、生々しさが損なわれる傾向があるようです。
修復、補正
当店で作品電子化の研究を始めたきっかけは、古い作品の修復です。掛軸の仕立て直しには、掛軸などを作品だけの状態まで剥がす必要があります。その際、糊をゆるめるために水分を多く使うため、その段階では紙が非常にデリケートで、かなり神経を使います。また、仕立て直しを繰り返されたものの場合、墨の膠分が緩んで滲んだりと、作品を傷める可能性があります。電子化し、画面上で汚れや滲みを処理すれば、作品を汚損する心配がありません。オリジナルは大切に保管して頂き、複製を鑑賞する、というスタイルが提案できるのでは、と思っております。
作品の制作
書の古典のオリジナルサイズは意外に小さかったりするものです。年輩で大作を構成する体力に不足を感じておられる方、入門の方など、扱いやすいサイズの筆で稽古し、小さく書いて大きく印刷する、と言う墨作品の楽しみ方はいかがでしょうか。
また、描画ソフトなどを用いて制作された、コンピュータ利用の作品(CG)を当店で印刷することも可能。掛軸は言わば「携帯できるアート」。写真やCGなど、普段表装しない作品をを掛軸にしてもおもしろいかも知れません。ほかにも、ゼロからコンピュータ利用で制作するのではなく、自身で描かれた墨のパーツをデータ化・合成し作品を制作するなど、コンピュータ利用ならではの技法もいろいろ工夫できることと思います。
共作
ひとつの紙に2名以上で共作をしようとする場合、後から書かれる方は失敗することができません。電子化された作品であれば、画面上での合成となり、最もよく書けた作品を持ち寄り、ひとつの作品とすることが可能です。デザイナーに掛軸の裂地(布)のパターンをデザインしてもらい、書家とデザイナーの共作、というのもおもしろいかも知れません。
掛軸への応用
顔料系インクジェットプリンタは、専用のポリエステルクロス(布)に印刷が可能です。掛軸へ応用すれば、地色、柄色の指定だけでなく、柄のサイズも自由自在。
従来は「選ぶ」ことしかできなかった色柄を「作り出す」ことが可能になりました!
紋様の繰り返しだけではなく、大きなひとつの絵柄を配することもでき、反物では実現不可能なグラデーションなどの表現も可能です。既存の柄だけでなく、たとえば苺・蜘蛛など、表装の裂地では見ないような柄を使うこともできます。
牡丹唐草、青海波など、伝統的な紋様はいくつかご用意ありますし、お気に入りの柄を掛軸に応用したい、といったことも可能です。
インクジェット用の布(クロス)メディアを使用した掛軸への応用は、2つの方法が考えられます。
印刷生地利用表装
ひとつは、好みのパターンをプリントした布地を使って「切り継ぎ」など在来の技法で掛軸に仕立てるやり方です。プリントは、緞子の織柄の立体感や深みには及びませんが、色柄が自由にできれば、よりご自身のイメージに近い掛軸を作ることができるでしょう。
一体印刷による掛軸
もうひとつは、電子化された作品を、掛軸のデザインとともに1枚の布に印刷してしまうやり方です。従来、高度な技術が必要であった曲線でのくりぬきや別の布地のはめ込みなどもソフトウエア上のことなので実に簡単です。作品の上にデザインの要素を配することすら可能です。
以上のように、作品の電子化、大判プリンタによる印刷で、墨表現の世界は、あなたの発想次第で無限に広がります。興味がおありの方は、ぜひ凌雲堂へお越し頂き、実際に印刷した様々な形態のものを実際にご覧頂き、 ご自身としてのご利用方法をご検討ください。
あなたの遊び心と、凌雲堂の技術で、 素晴らしい墨表現の世界をさらに広げていただければ、と思っております。